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留学生活、続行。そんなスケオタブログ。
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前回の記事に拍手を下さった数名の方、ありがとうございます(笑)
きちんと住み分けというか注意書きをした上で、ゆっくり訳していこうと思います。

動物園の記事書きたいんだけどちょっとねむいので;;
書き溜めておいたこっぱずかしい(と自分で言っちゃう)自分語り第三弾。
いつのまにやら第三弾ですが、そんなに長くは続きません。
プログラムによって顔まで変わっちゃう、演技中のはじける笑顔がすてきなあの人。

 彼は国内でこそ一、二を争うトップ選手であるものの、世界的に見ればお世辞にもトップ選手とは言えない。だいたい欧州選手権の10位から20位くらいを行ったり来たりしているような。今までの最高記録は世界選手権9位。極端すぎて比較にならないが、かのプルシェンコなら取ったこともないような低い順位だ。
 しかし、わたしは彼から目が離せない。別に顔がとんでもなくかっこいいからというわけではない(かっこいいけど)。いや、もちろん最初はかっこいいなぁと思っていた。ただ、かっこいいなぁと思って動画を見ていくうちに、ある疑問がわいてきたのだ。
 どうしてこの選手は。
 変なプログラムばっかりなのだろう。

 何をもって変とするかは意見の割れそうなところであるが、まあいわゆる「変プロ」をもつ選手は決して少なくない。プルシェンコのマイケルジャクソンメドレーなんか、頭から大量の疑問符が出たものだ。でもこの人はそうじゃなくて、なんというか、ここ数年、変……というか、強いて言うなら、妙に具体的なのに何を表現しているのかさっぱり分からないような(失礼な言い方だが、けなしているつもりはない)、独創的すぎるプログラムが圧倒的に多いように感じられる。
 トップ選手でもないのに。
 ふつうの選手ならとっくに引退している年齢で、意味不明で無駄の多い(二度目になるがけなしているつもりはない)プログラムばっかり。
 しかも成績はぱっとしない。
 それでもリンクに上がった瞬間から曲が終わった後まで、彼の演技ははっきりと、続いている。
 まるで変なこだわりでもあるかのよう。
 ……何がこの人をそこまでさせるんだろう。
 そんな風に思って動画を漁っていくうち、バンクーバー五輪の事実上の最終選考となった2010年欧州選手権の動画へたどり着いた。
 国内戦でライバルに勝ったロシアのセルゲイ・ヴォロノフは、この大会で精彩を欠き、惜しくも五輪出場を逃した。
 彼もそうだ。

 ナショナルでライバルに勝利し優勝、欧州選手権のSPではパーソナルベストを出す演技をした。
 そしてこの日。バンクーバーが、彼の視界に入ってしまったのではないかと思う。
 彼の演技は、ありていに言ってしまえば、ひどいものだった。2度の転倒以外にも、お手つきや両足着氷などのミスを連発。ただ全身からあふれる気迫は、NHK杯のときとは比べ物にならなかった。
 皮肉なことに、二重の意味で息の止まるような、気迫のこもった演技だったのだ。

 「フォトジェニック」という題のつけられたこのプログラムは、ナルシストの男が自分の人生を見つめなおすストーリーだと、どこかで耳にした。歓声から始まる音楽、シャッター音、貴族のような衣装、どこか寂しげな音色の「sweet dreams」、王子様のような端正な顔立ち、鏡で自分の顔を見つめる振り付け。きっとこのプログラムが滑れるのは、世界中で彼だけだろう。
 初めて動画を見たときは気づかなかったのだが、曲が変わってシークレットガーデンの曲になる部分の振り付け。
 ふと鏡の端にとらえた自分の顔が信じられないといったように鏡に顔を近づけ、そして激しく拒絶し、もう一度、おそるおそる鏡を見て、そして「彼」は鏡を……叩き割る(あくまで、わたしにはそう見える、というだけだ)。
 この振り付けを認識したとき、心臓をぎゅうっとつかまれたような気持ちになった。
 ……ジャッジには、この振り付けが見えたのだろうか?
 曲がふたたび、さきほどよりすこし不穏な曲調に変わった「sweet dreams」に戻ると、何かが吹っ切れたように「彼」は両手を広げ、ステップのところどころで、そして曲の終わった後まで、鏡を、自分の顔を、見つめ続けている。

 その振り付けの意味するストーリーを、頭の悪いわたしは理解できない。ただ何かがわたしを揺さぶり、頭にこびりついたsweet dreamsが消えない。平常心ではいられないような、寂しくなるような、そんな気持ちになる。
 あらためて動画を見直して、これは彼の総決算たるプログラムだったのだろうと、根拠はないがそう思う。
 五輪への切符をつかみかけた局面でのミスだらけの演技も含めて、これが彼なのだ。ここぞという時にこそ失敗する、スポーツとはそういうものなのだ。
 転倒をくりかえした後のステップ中、彼は何を考えていたのだろう。どんな思いを込めて、コーチを思いきり抱きしめたのだろう。
 そのとき彼の頭には、ひとつの明確な終わりが見えていたのではないか。「引退」という、終わりが。

 そんな中、彼の現役続行の情報が飛び込んできたのは五月のことだったか、それとも六月だったか。
 何が彼をそこまでさせるのか、まったく分からない。
 わからないけれど、昨年のNHK杯で最下位になっても、五輪出場を逃しても、この7月で28歳になっても、卒論に追われても、それでも彼は自分の世界を表現するために、独創的なプログラムを携えて現役続行している。
 そこまでするだけの「何か」が、彼にあるというのなら。
 ならば、わたしはそれを応援したいと思ったのだ。

 「幸せになれる」、彼はそう言ったらしい。「スケートをするのが楽しいんだ」。
 彼の世界は彼にしか表現できない。フィギュアスケートは競技でありながら芸術であり、ある意味ではそこに成績は関係ない。記録に残れる選手はごくわずかしかいないが、記憶に残るチャンスは誰にでもある。そして彼は、まちがいなく人の記憶に残る選手なのだ。
 こんな言い方をすべきではないのかもしれないが、今年で28歳になった彼の選手生命は、もう決して長くはないのだから――それでも彼本人が、今シーズンの現役続行を決めているのだから。
 どんな形であれ、彼が満足できる形で現役を終えられればいいな、と、強く思う。

 サルコウの栄華はどこへやら、今やすっかりフィギュアスケート人口の減ってしまったスウェーデンで長いこと第一人者として活躍してきたクリストファー・ベルントソン。彼のライバルであり後輩でもある、彼を破って今回のバンクーバーオリンピックと世界選手権に出場したアドリアン・シュルタイスが世界選手権でとった順位は“9位”。奇しくもそれは2007年の世界選手権で彼自身がとった自分史上最高の順位と同じであった。そしてシュルタイスの9位は、来年の世界選手権でのスウェーデンの2枠獲得を意味する。
 2011年世界選手権。開催地は、2007年世界選手権の思い出の地、“東京”。
 日本にはなぜか彼のファンがたくさんいるらしい。
 彼の再来を、待っている人がたくさんいる。彼が国内戦を勝ち抜いて世界選手権の出場権を手にし、あのときと同じ会場で、あのときのようなすばらしい演技ができることを、子供のような笑顔をわたしたちに見せてくれることを、切に願う。

----------
 基本的にフィギュア見て楽しめればいいやというぬるい人間なので、転倒シーンとか見るのちょっとこわい。
 でも、いいよ。あなたが現役を終えるまで、どんな成績も目を逸らさず見つめるよ。今はそういう気持ちだ。
 ――フィンランディアとスケートカナダを楽しみに、ちょっぴり泣きそうになりながら、待つ。

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佐野さん、こんばんは。
日中関係が騒々しくなってきて、心配になって書き込みします。
佐野さんの周辺はどんな様子でしょう?
以前半日デモがあったときも、日本では大変な騒ぎでしたが、中国に出張に行ってた義兄に聞くと、地元では知ってる人は(デモのニュース)いなかったと言いました。
中国ならではの情報操作って感じがしましたが・・・。
佐野さんも、気をつけてくださいね。
ともちん 2010/09/26(Sun)18:42:23 編集
Re:
こんばんは、コメントありがとうございます。
わたしの通っている大学は日本人留学生も多いせいか、特にこれといった騒ぎもなく日常生活が送れています。大使館に勤める知人は相当忙しいようで、ここ数日連絡が取れませんが^^;
仰るとおり中国は情報統制が厳しいので、政府を批判するような意見は絶対に出回らず、皆、船長は不当逮捕だったと思っています。なので今のところ、中国人とこの話題について話すのは避けた方がよさそうですね。
何か気づくことがあれば記事にしたいと思います。どうもありがとうございます♪
佐野  【2010/09/26 22:16】
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