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留学生活、続行。そんなスケオタブログ。
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ネットが繋がったらなんらかのアクションを起こすとか言ってましたね私。コメントの返信しかしてませんでしたね。
ということで、ネット繋がってない頃に書き溜めていた文章を載せます。
雪組ショーの感想は、とりあえず最高だった!!!の一言で。ちゃんとした感想もどきは、前半戦は今日中、後半戦は今週中くらいにアップできたらなーと思っています。予想以上に長いです。学校が始まると、最初の一週間くらいはけっこうあわただしくなっちゃうかもしれないので、あくまで希望ですが……

さて、自分が自分のために書いている謎の語り、#2。
タイトルの「一人で」がすごく重要だったりします。あくまで一人。誰にも迷惑をかけるつもりはありません(笑)
#1を書いてから色々考えていたのですが、今回はこの人。
自分勝手な素人目線なので的外れな部分もあると思いますし、ちょっと自分の話も入ってしまいましたが(つд`)ゆる~くご覧ください。続きから。

批判を受け、頭を下げて生きてきた。
批判のせいで辞めたいと思ったことはない。
自分を証明したかった。
自分がまだ強いことを、見せたかった。


 卓越した技術に裏打ちされた力強いジャンプ、田舎の青年といった感じのやわらかな笑顔と端正な顔立ち(実際彼は田舎の青年であるらしい)、スケートに対する真摯な姿勢。彼は本国のみならず、日本や世界各国でも根強い人気を誇るトップスケーターだ。
 こういう言い方は誤解を招きそうだが、わたしは彼のファンではない。競技とエキシビジョンの動画をそれぞれ数本、見た程度だ。素人のわたしにはそれがすごいかすごくないかの判断さえつかない。すごい選手だからすごいのだろうと思う程度だ。
 ただ少し前から、彼の演技を見ていると「はらはら」するような気持ちになることがあった。その理由をわたしはこう考える。彼があまりにもまっすぐな、するどい刃のような情熱をむき出しにしたまま滑るので、その刃が見ている人や、ときには彼自身をも切り裂いてしまいそうに思えるのだ。
 わたしは彼のファンではない。ただ彼のあまりにまっすぐな、見ている側にだだ漏れになってしまうようなまっすぐな感情が、かつての自分と同じ種類のものに見えて、わたしはもう、彼を応援せざるをえないのだ。

 十代の頃から四回転ジャンプを跳び、失敗の許されないSPから四回転を積極的に取り入れ、新採点下で唯一1プログラム中に3度の四回転ジャンプを成功させ、大技ジャンプが評価されにくい傾向にあってもなお四回転にこだわりつづける選手。
 採点方式に合わせた構成にするのは選手にとって非常に大切なことであり、愚直なまでに四回転にこだわりつづける彼を時代遅れと笑う人もいるかもしれない。彼の四回転へのこだわりようは2002年ごろの、ヤグディンとプルシェンコが熾烈な争いを繰り広げていたいわゆる「空中戦時代」を髣髴とさせるものだ。
 彼は以前から一貫して「四回転の得点をもっと上げてほしい」という主張をしているらしい。「四回転はフィギュアスケートの未来」と言い切り、「フィギュアスケートの未来のために四回転を跳びつづける」と言い、「現役中に五回転ジャンプを跳びたい」という発言までしている。ジャンプを華麗に決めておいて、ステップやスピンのレベルを取りこぼすこともある。つなぎが薄いとか、表現力に乏しいとか言われることもあれば、「スピンなんてなくなってしまえばいい」なんて発言をしたという話もある。まったく清々しいまでのクワド馬鹿一代、頑固親父といった感じだ。
 いったい何が彼をそうさせるのか。「空を飛んでいるような気持ちになる」という四回転ジャンプには、体力的・技術的に大きなリスクを犯すほどの何かがあるのか。
 もちろんわたしには彼の気持ちは分からない。フィギュアスケートの技術の発展やら何やら、そういった話は山ほど耳にするが、正直、ジャンプが見分けられる程度のわたしには遠い話だ。ただわたしが言えるのは――彼のジャンプに対する並々ならぬ情熱が、彼の演技から痛いくらいに伝わってくるということだ。二十代も中盤とは思えない愚直さ、部活に命を懸ける高校生のようなまっすぐな感情がひしひしと伝わってきて、わたしは「はらはら」してしまう。

 優勝すら期待されたバンクーバーオリンピックを、彼は16位というにわかには信じがたい成績で終えた。オリンピックが終わってからそれを知ったわたしや、生中継を見て落胆したファンの苦しさなど比ではない、彼はどれくらい辛かったのだろう。いや、それはもう「辛い」などという言葉では形容できない、ほとんど肉体的な痛みに近かったのではないか。
 人々は彼を「オリンピックの魔物」にやられた、と言った。わたしはその言葉を聞いてこう思ったものだ。
 ああ、フィギュアスケートにも魔物がいたのか。
 かつてわたしの人生がハンドボールそのものであったころ、試合会場でたびたび「そういうもの」を目にしていた。高校三年生の五月、一回戦で敗退した強豪校の選手の呆然とした表情。それはちょうど、オリンピックでFSの演技を終えた彼の表情に似ていた。わたしには「魔物」が、「スポーツに臨むこころ」というものが、他人事には思えないのだ。
 オリンピックを終えてから世界選手権までの一ヶ月足らずの間、彼は何を考えたのだろうか。それは彼の人生を揺るがす一ヶ月だったのではないか。

 そして世界選手権が終わったころ、わたしはやっと彼の世界選手権SPの動画を探しあてて、見た。
 絶望のふちから戻ってきた元世界王者――このSPには、彼の選手生命がかかっていたのではないかと思う。国内選考会を経てなんとか出場できたこの世界選手権で復活できなかったら、彼はどうなってしまっていたのだろう。

 けれど、彼は勝った。
 いつもより一段とするどい、触れたら切れそうな表情が、彼の覚悟と重圧を物語る。力強くリズミカルな音楽。
 完璧な4T-3T!
 ファンでもないのに、涙があふれた。あの音楽が頭に残って数日離れなかった。曲名の“Rise”という単語は、「上昇する」「立ち上がる」「生き返る」「高まる」というような意味を持つ。まさに“Rise”、奇跡の復活劇だった。
 ステップの前にコーチと目を見交わす彼と似たようなことを、ハンドボールの試合中にやったことがあるだとか、演技後の全身からあふれるガッツポーズと似たようなこともした経験があるだとか、個人的な感情もたくさんある。けれど、彼のスケート人生で最悪かもしれない経験を経てのあの演技、あのガッツポーズを見て、心を揺さぶられない人なんていないんじゃないかと思う。
 見ているこっちが「はらはら」してしまうほどの、あまりにも純粋な感情のかたまり。あのガッツポーズで、わたしは決めたのだ。特に好きでもないこの選手を、今後なにがあっても応援し続けようと。

 精神的な意味でわたしの高校時代と多分にシンクロするところのある(もちろん、わたしが勝手に思っているだけだ)その選手は、シード選手として今季の中国杯にアサインされている。会場はわたしの大学から電車で十五分もかからない距離だ。
 そうなったらもう、答えは出ている。
 ときに自分を追い詰めてしまいそうなほどの鋭さとまっすぐさを持った、勇者、サムライと呼ぶにふさわしいブライアン・ジュベール。今年で26歳とかなり高齢の部類に入るその選手を見るために、わたしは中国杯のチケットを買うことだろう。生で見る彼の演技は、きっと液晶越しに見るよりずっと、まっすぐ、強く、眩しいはずだ。

(同じことはカロリーナ・コストナーにも言える。彼女の演技には「はらはら」はしないけれど、彼女もまた、同じタイミングで絶望のふちから帰ってきたのだ。)
(でも衣装のセンスはどうかと思う。男子の衣装なんて、無地のシャツにズボンでも全然構わないのに(´;ω;`))

9/19 追記
ARTISTRY on ICEの感想をアップしたらアクセスがそれなりに増えるだろうと予想していたのだが、この記事をアップした段階からかなりの数のアクセスがあって、正直驚いた。
彼を語るうえで大切な要素が抜けていたと思うので、軽く触れておく。
まず、ヤグディンのこと。以前の彼はヤグディンになりたかったそうだ。わたしにはそれを見分けることはできないが、ファンからも解説者からもそう指摘されてしまうほど、彼はまっすぐ、自分の目標に向かってまっすぐ歩んでいたのだ。
そして、文中でも触れた2010世界選手権の際に出された、彼のコメント。この記事をアップした2日後くらいに、冒頭に追記した。このコメントから、彼の苦悩と強い意志がありありと見て取れる。
どんなモチベーションを持った人間なら、あのバンクーバーの地獄のあとに「辞めたいと思ったことはない」と言えるのだろうか。

解説者にさえ「彼はヤグディンになろうとしている」と指摘されたトリノオリンピックから四年、絶望のふちから戻ってきた彼が2枚目となるちいさな銅メダルとともに手に入れたものは、ヤグディンよりも得難い、アスリートとしての矜持だったのだろう。

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